評 

千鳥由貴 船便 週刊俳句 Haiku Weekly: 10句作品 千鳥由貴 船便 つちふるや八坂の塔を鳥かすめ船便で届く木箱や花ミモザ三毛猫を見ぬこの頃や木瓜の花長き髪束ねて帰る花疲れ歩みまだ殻の内なるがうなかな書く前の言葉つぶやくシクラメン低く飛ぶ孕雀を子は…

https://weekly-haiku.blogspot.com/2024/04/8872024421.html

田中木江 さくらえび みやこ鳥春からのこと話し合ひ花菜漬わたしも休みとれたるとひらきだす梅々へ枝追ひつかず熊ん蜂とぶクレヨンの黒を引きものの芽の先につたはる工事かなはなうたにちらほら歌詞や春大根春日傘三種のおはぎ買ひ揃へよき岩に足跡あまた磯…

ダ・ヴィンチ レビュー

父権社会の拷問器具「コルセット」を静かに淡々と描写する恐ろしさ。「北斗賞」を受賞した佐々木紺の第一句集 | ダ・ヴィンチWeb 静かな俳句である。遠くの灯台の光を眺めるように、虫メガネで手元を拡大するように、丁寧に、静かに、日常が語られる。 佐々…

佐々木紺

うちそと 佐々木紺 « 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト 週刊俳句 Haiku Weekly: 10句作品 佐々木紺 声と暴力 http://fukiosho.org/archive/arc05/05_051.pdf

句集『平面と立体』

おぼえて、わすれる 餅花や曲線のふれ合へば点 水鳥の水に吸はるるとき砂鉄 平面と立体 紙切つて紙よりもどる蝶ひとつ かざしゐて指輪の石をとほる船 夢を剥がす ブラウスのボタンうすくて蓬摘む 白玉や生前のこと忘れさう コルセット 絵の中をひしりと寒鯉…

白鳥句集

松下カロ『白鳥句集』は全編白鳥尽くしの一冊。11章から成る。第2章のタイトルが「ウクライナ」であり、18句が収められている。 戦争に対して「否」という立場は前提として、それをどう表明するか包み込むか。反戦といった直接のメッセージから注意深く距離…

現代俳句協会データベースより 「手袋」句

側に手袋赤し魚の腸 宙吊りにわが手袋と鵠と 左右なき手袋こそは哀しかり 左手の手袋がまた汚れている 手袋が立っているなり犬死あり 手袋に五指を分かちて意を決す 手袋に故郷の山河嵌めて恋 手袋に閉じ込めている感情線 手袋の五指恍惚と広げおく 手袋の過…

同世代の俳人

八木三日女は大正13年生まれ。渋谷道は昭和元年生まれ。 https://gendaihaiku.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/hairon_21_1.pdf

足袋ひらき二夫にまみえる足入れる 白足袋の急げばそこは橋掛り 逢わぬ日の足袋から風に乾いていく 白足袋を中途半端に汚す一日 妄執の足袋百足も穿きつぶす 足袋脱いで孔雀のような疲れとも 足袋に座し剃刀を当てる角度 足袋白くて櫛歯を弾くオルゴール 小…

『春の絵』を読む

つまだちに鶏が押す風のカンナ「茗荷のなか」 魚の眼に濡れっぱなしの月通る「茗荷のなか」 はくれん化のはな母乳たらたら垂れ「白猫」 鴉ああ口中昏い椿咲く「白猫」 にょきにょき脚生え顔生え梅雨の洋館「白猫」 葡萄食べおわり青い火花残る「白猫」 渓ふ…

悼む

人悼むかたちに釘の凍てにけり 悼む時には頭を垂れる。釘から磔刑にも想像が及ぶ。

鳥の死と靴

鳥の死のごとく白靴干されをり 干した靴が鳥の姿と似ていると言われればそうかもしれない。空を飛ぶ鳥に人は憧れるが、空を飛べても小鳥に天敵は多い。自由と危険は隣り合わせと言うべきか。靴は人にとっての自由な行動の象徴であり、その自由の靴と死の間の…

少年少女

少年と少女の句は頻繁に登場する。「少年少女」からどの段階の子を思うかによっても、幸福かどうか印象が違いそうだ。幼い子供であれば悩みもまだ少なく、幸福の純度が高いだろう。思春期に近づくにつれて、体の成長と心の成長のずれが大きくなり、ぎこちな…

抱擁は

かはほりや抱擁はこんなかたちで 「抱擁はこんなかたちで起こる」と続くのだろうか。挨拶の抱擁なら出会う時や別れる時とタイミングが計れるかもしれない。だが、こみ上げる愛情や欲情からの抱擁に予定も筋書きもない。走り出した気持ちを体が慌てて追いかけ…

小鳥きて昼のからだをうらがへす

小鳥きて昼のからだをうらがへす 仰臥だと思う。昼寝にしては寝返りを打ったりして寝ている様子ではない。昼のからだはきっと女の体で、男が裏返したというより、女が自分で裏返ったと思う。昼はいっそう外が気になる。小鳥など来ればなお意識はそちらへ逸れ…

『一対』を読む

小西瞬夏句集『一対』〈いちまいの光と影 若森京子〉 - KAIGEN 海原 によると、集中蝶をモチーフにした作品は四十二句もあるという。 てふてふの脚より生まれかなしめり てふてふが誕生したのだろうか。蝶ならば肢、脚というからには人ととりたい。ならば、…

牡鹿声絞り出すとき舌も出し

意外な一面だ。鹿が舌を出したらほぼかわいい表情ととってしまうけれど、声を絞り出すと言えば多かれ少なかれ苦労している様子。観察した上での発見ではないかと思う。 百の草植ゑて招きぬ雨蛙

Pronounciation change in combined words IN JAPANESE 連濁

The word for paper in Japanese is 'kami'[紙]. when this follows another word 'ori' which means 'folding', the reading becomes -gami instead of -kami, as in 'ori gami'. Have you noticed? Nouns with unvoiced sounds can get voiced when the no…

初鴨 句集『中くらゐの町』を読む

田水張る黒目大きな鳥のゐて この句集に限らず、小動物を詠んだ句は取り合わせではない句が多い。この句は取り合わせ句だ。田んぼの支度を鳥は見ていただろうか。田の漲る水面と鳥の大きい黒目が微かにつながるような瑞々しさがある。 初鴨の油の抜けしやう…

能面は顔より小さしきりぎりす p.137

他の民俗芸能の仮面劇では、顔をおおい隠す大きさのものも多いですね。でもそれらはいかにも化けている、演じている印象を受けるものです。ところが役者のあごが見えていることで、能面は、演者の身体と一体化した印象を与えるのです。あごと首のラインの動…

青蛙廃墟の水に養はれ p.84

経済が好調なら、不要になった施設も取り壊したり転用したりできるのではないだろうか。ローマや中国の遺跡など立派な遺産になれば浮かばれるが、維持・整備する余裕がなければ、文化的価値があっても廃れてしまう。 どんな栄華も衰退を免れることはない。人…

『中くらゐの町』殺生をせぬ里芋のぬめりかな p.53

一読不思議な感じがした。人がではなく、里芋が殺生をしないような書き方だ。とりあえず、里芋料理では動物や魚を殺して肉を食べることをしないととる。殺生は特に仏教において強く戒められている一方、食べねば生きていけないので感謝しながらいただくとい…

『中くらゐの町』を読む

モノポリー蜆が砂を吐く間p.23 水、砂、泥ぐらいの違いはあれ、蜆には吐く句が少なくない。「蜆が砂を吐く」まで言ってしまえば、残りはわずか八字。この句ではそこに「モノポリー」を配したことで、他に類を見ない蜆句を演出している。 蜆漁で知られた地に…

岡田由季句集『中くらゐの町』を読む

句集『中くらゐの町』 月なき夜人数分のヨガマットp.10 湯たんぽに軸足置いて眠りをりp.14 雪もよひ公民館に湯を沸かすp.16 セーターの四人が揃ふリハーサルp.19 三笠山ほどの膨らみ夏布団p.32 マットは一人一枚なので、人数分のマットがあるのはヨガ教室の…