能面は顔より小さしきりぎりす p.137

 他の民俗芸能の仮面劇では、顔をおおい隠す大きさのものも多いですね。でもそれらはいかにも化けている、演じている印象を受けるものです。ところが役者のあごが見えていることで、能面は、演者の身体と一体化した印象を与えるのです。あごと首のラインの動きが、木工作品である能面にさまざまな表情の機微を生み出します。

 

能楽トリビア:Q15:能面はなぜ小さい?

 能面はわけあって顔より小さく作られるが、能面が小さいことを詠んだ句は既にあるかもしれない。注目は「きりぎりす」。きりぎりすつながりで「むざんやな甲の下のきりぎりす」を思い起こし、敗者や敗残以前の栄華を、あるいは翁や女性を思うこともできる。能面はしみじみと受け止めてくれそうだ。