おぼえて、わすれる
餅花や曲線のふれ合へば点
水鳥の水に吸はるるとき砂鉄
平面と立体
紙切つて紙よりもどる蝶ひとつ
かざしゐて指輪の石をとほる船
夢を剥がす
ブラウスのボタンうすくて蓬摘む
白玉や生前のこと忘れさう
コルセット
絵の中をひしりと寒鯉のとほる
芍薬のぱふと弾けて祈祷室
背を裂いて夏に生まれるワンピース
ゆふぐれを壺のかたちで白鷺は
押し花のさいごの呼吸しぐれゆく
はね橋の弧の外を冬の鷗かな
奇書
春潮や日のあたためる雲のうら
まばたきのたびに異なる海市立つ
陽炎や老人になる息子たち
玉葱を剥いてこの世の外へ出る