2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

悼む

人悼むかたちに釘の凍てにけり 悼む時には頭を垂れる。釘から磔刑にも想像が及ぶ。

鳥の死と靴

鳥の死のごとく白靴干されをり 干した靴が鳥の姿と似ていると言われればそうかもしれない。空を飛ぶ鳥に人は憧れるが、空を飛べても小鳥に天敵は多い。自由と危険は隣り合わせと言うべきか。靴は人にとっての自由な行動の象徴であり、その自由の靴と死の間の…

少年少女

少年と少女の句は頻繁に登場する。「少年少女」からどの段階の子を思うかによっても、幸福かどうか印象が違いそうだ。幼い子供であれば悩みもまだ少なく、幸福の純度が高いだろう。思春期に近づくにつれて、体の成長と心の成長のずれが大きくなり、ぎこちな…

抱擁は

かはほりや抱擁はこんなかたちで 「抱擁はこんなかたちで起こる」と続くのだろうか。挨拶の抱擁なら出会う時や別れる時とタイミングが計れるかもしれない。だが、こみ上げる愛情や欲情からの抱擁に予定も筋書きもない。走り出した気持ちを体が慌てて追いかけ…

小鳥きて昼のからだをうらがへす

小鳥きて昼のからだをうらがへす 仰臥だと思う。昼寝にしては寝返りを打ったりして寝ている様子ではない。昼のからだはきっと女の体で、男が裏返したというより、女が自分で裏返ったと思う。昼はいっそう外が気になる。小鳥など来ればなお意識はそちらへ逸れ…

『一対』を読む

小西瞬夏句集『一対』〈いちまいの光と影 若森京子〉 - KAIGEN 海原 によると、集中蝶をモチーフにした作品は四十二句もあるという。 てふてふの脚より生まれかなしめり てふてふが誕生したのだろうか。蝶ならば肢、脚というからには人ととりたい。ならば、…