『春の絵』を読む

つまだちに鶏が押す風のカンナ「茗荷のなか」

魚の眼に濡れっぱなしの月通る「茗荷のなか」

はくれん化のはな母乳たらたら垂れ「白猫」

鴉ああ口中昏い椿咲く「白猫」

にょきにょき脚生え顔生え梅雨の洋館「白猫」

葡萄食べおわり青い火花残る「白猫」

渓ふかく沢蟹が咲く姉無口「白猫」

春の絵の片すみに置く鶏の首「喉あかく」

花を焼く母のししむら刺すために「喉あかく」

きつね雨茸山も赤子も眠りけり「喉あかく」

琵琶僧は墓標となって秋の風「喉あかく」